格安VPSのAmazon LightSailを利用して調べてみた

格安VPSのAmazon LightSailを利用して調べてみた WEBサービス

今現在、どんどん利用者を増やしているAWS(Amazon Web Services)のVPSサービス「Amazon LightSail」を実際に利用して調べてみました。

結論を言うと「手軽にWordPressサイトを立ち上げたい」という方や、今現在利用しているVPSサービスの移転先を探しているという方にとってAmazon LightSailはかなり有力な候補となります。

ではさっそく調査の詳細を書いていきます。

Amazon LightSailとは

Amazon LightSail公式サイト

公式サイト:https://aws.amazon.com/jp/lightsail/

AWS(Amazon Web Services)という名前を聞いたことがある方は多いと思いますが、AWSは世界で最も有名と言っても過言ではないIaaSのクラウドコンピューティングサービスです。

「AWSを利用すれば何でもできる」というくらい多種多様なサービスがあり、その信頼性の高さと拡張性の高さは圧倒的で、今現在クラウドサービス部門での世界シェアの第一位を確立している超有名サービスですが、何でもできるがゆえにその各種AWSサービスの設定方法やカスタマイズ方法をマスターするのも一苦労です。

ある意味「初心者お断り」的なAWSでしたが、Amazonが誰でも手軽に利用できるというコンセプトで展開しているVPSサービスがAmazon LightSailです。

LightSailを利用すれば、WordPressサイトを公開するくらいであれば本当に10分もあれば出来てしまうレベルの簡単さです。(※Bitnami利用時)

更に、2018年の夏に全ての料金が半額となり、メモリ512MBのVPSであれば3.5ドル(USD)/月から利用できてしまうというAWSらしからぬ圧倒的なコストパフォーマンスを誇っております。

Amazon LightSailで出来ること

標準機能

以下がLightSailの標準機能として備わっています。

  • 静的IP(固定IP)アドレス利用可
  • DNS管理機能
  • サーバーのモニタリング機能
  • SSHターミナルアクセス機能 (Linux/Unix)
  • 直観的なマネジメントコンソール(管理画面)
  • ファイアウォール機能(ポート番号による指定)
  • RDPアクセス機能 (Windows)
  • 安全なキー管理(公開鍵認証)

WordPressサイトを公開するくらいであれば直感的に一瞬でできます。新規WordPressサイト公開も簡単ですし、VPSの乗り換えによるWordPressのサーバー移転も楽々です。

有料オプション

■スナップショット

有料ですが、格安の月額0.05ドル(USD)/GBでスナップショットも利用できます。そのスナップショットを利用してプランを変更すればサーバーのスケールアップも簡単にできます。

■マネージドDB

マネージドDBという有料オプションサービスを利用すれば、マルチAZによるデータベースの運用も可能です。(Amazon RDSよりも料金が安いです)

■ロードバランサー

18ドル(USD)/月にてロードバランサーも利用できます。

VPSとしての自由度

VPSですので独自でOSを入れて普通のサーバーとして運用することもできます。

  • サーバーOSはCentOS、Ubuntu、Debian、FreeBSD、Windows等たくさんの選択肢から自分で選択可能
  • 標準装備のDNS管理機能ではなくBIND等で独自のDNSサーバーを立てられる
  • NginxやPHP7.3、MariaDB10.3などを自由にインストールしてサーバをカスタマイズできる
  • Postfix、Dovecot等で独自のメールサーバーを立てられる
  • ドメインの逆引き設定も可能(サポートに申請)

上記のことが可能なので、LightSailはテンプレートを利用して手軽にWordPressサイトを立ち上げたいという方から、通常のVPSとしてOSのインストールから各種サーバーまで全て自分で設定したいという方まで幅広く対応できます。

料金

2018年の夏に全ての料金が半額となりかなり話題になりました。この半額化により他のVPSサービスと比較しても格安レベルとなっています。

Amazon LightSailの料金表

■基本料金(Linux/Unix)
※3.5ドル(USD)のプランはお試し期間として1ヵ月間(750時間まで)無料で利用できます。
※無料データ転送量を超過すると、東京リージョンの場合は0.14ドル(USD)/GBのデータ転送量が追加でかかります。

月額料金メモリCPUストレージ無料データ転送量
3.5ドル(USD)512MB1コア20GB SSD1TB
5ドル(USD)1GB1コア40GB SSD2TB
10ドル(USD)2GB1コア60GB SSD3TB
20ドル(USD)4GB2コア80GB SSD4TB
40ドル(USD)8GB2コア160GB SSD5TB
80ドル(USD)16GB4コア320GB SSD6TB
160ドル(USD)32GB8コア640GB SSD7TB

■基本料金(Windows)

月額料金メモリCPUストレージ無料データ転送量
8ドル(USD)512MB1コア30GB SSD1TB
12ドル(USD)1GB1コア40GB SSD2TB
20ドル(USD)2GB1コア60GB SSD3TB
40ドル(USD)4GB2コア80GB SSD4TB
70ドル(USD)8GB2コア160GB SSD5TB
120ドル(USD)16GB4コア320GB SSD6TB
240ドル(USD)32GB8コア640GB SSD7TB

■データ転送量を超過した場合の費用

リージョン追加料金
米国東部 (バージニア北部)0.09ドル(USD)/GB
米国東部 (オハイオ)0.09ドル(USD)/GB
米国西部 (オレゴン)0.09ドル(USD)/GB
カナダ (中部)0.09ドル(USD)/GB
欧州 (フランクフルト)0.09ドル(USD)/GB
欧州 (アイルランド)0.09ドル(USD)/GB
欧州 (ロンドン)0.09ドル(USD)/GB
欧州 (パリ)0.09ドル(USD)/GB
アジアパシフィック (ムンバイ)0.13ドル(USD)/GB
アジアパシフィック (シンガポール)0.12ドル(USD)/GB
アジアパシフィック (シドニー)0.17ドル(USD)/GB
アジアパシフィック (東京)0.14ドル(USD)/GB
アジアパシフィック (ソウル)0.13ドル(USD)/GB

■マネージドDB(オプション)
※可用性プラン(マルチAZ)とは、あらかじめ異なるアベイラビリティーゾーン(AZ)にあるスタンバイインスタンスにデータを複製して障害発生時にはデータベースを自動的にフェイルオーバーする機能です。

スタンダード15ドル(USD)30ドル(USD)60ドル(USD)115ドル(USD)
高可用性プラン (マルチAZ)30ドル(USD)60ドル(USD)120ドル(USD)230ドル(USD)
メモリ (RAM)1GB2GB4GB8GB
コンピューティング能力1 vCPUvCPUvCPUvCPU
SSD ストレージ40GB40GB40GB40GB
データ転送許容量100GB100GB100GB100GB
データの暗号化無しありありあり

■その他のオプション

オプション名費用
スナップショット月額0.05ドル(USD)/GB
ロードバランサー18ドル(USD)/月

EC2との違い

AWSといえばEC2でしたが、EC2とLightSailの代表的な違いを書いておきます。

■転送量は一定量まで無料(実質無料)

LightSailでは各料金プランに応じて一定量までの転送量が無料となっています。最安[3.5ドル(USD)/月]のメモリ512MBプランでも月間転送量1TBまで無料。メモリ4GBのプラン[20ドル(USD)/月]なら月間転送量4TBまで無料というようになっているので、よほどの月間PVを誇るサイトや動画などを配信するサイトなどでなければ無料範囲内で普通に利用できます。

月間転送量1TBという単位をPV数の超単純計算でシミュレーションすると、LightSailの最安プランでも1ページ1MBのWebページで100万PVあたりまで無料ということです。1ページ10MBあるというWebサイトでも月間10万PVあたりまで無料という計算になります。その無料転送量もプランをアップグレードすれば2倍、3倍、4倍となるので実質的に無料と考えても問題ありません。

そもそもそれだけPVのあるサイトであれば、収益化による利益ではじめから格安VPSなど利用する必要が無いのでもっと予算を掛けて通常のクラウドサービスを利用しましょう。

■インスタンスを停止していても課金される

EC2ではインスタンスを停止していれば時間単位の課金が行われませんでしたが、LightSailはインスタンス停止時でも課金が行われます。不用になったインスタンスは削除して課金されないようにしましょう。

■管理画面がシンプルでわかりやすい

EC2で一番やっかいなのは学習コストです。EC2は素晴らしいサービスですがその利用方法を覚えるのが大変でした。その点、LightSailの管理画面はシンプルでわかりやすく直感的に操作できます。

Amazon LightSailの管理画面(インスタンス)

Amazon LightSailの管理画面(ネットワーク)

■DNS管理機能が標準装備(Route53不要)

EC2でDNSの設定をする際はRoute53を利用するのが基本でしたが、LightSailではRoute53を利用しなくても簡単な管理画面からDNSの設定が可能です。

■LSA(サービス品質保証制度)は無い

LightSailにLSAは無いですが、LightSailの内部的にはEC2のt2シリーズを利用しているのでサービスの品質や信頼性に関しては問題無しと言ってもよいでしょう。

■要約

簡単に言うと、EC2より機能は制限されているが、安く簡単に料金の心配をほとんどせずに利用できるということです。

他社のVPSとの違い

なんと言っても他社のVPSサービスとLightSailの違いはその信頼性と可用性です。

VPSはその料金の安さゆえに可用性に関してはクラウドサービスには及びません。VPSを特別なオプション無しの標準機能のみで利用しているとメンテナンスや突発的な障害などによりサイトが落ちるということは多々あります。

そもそも可用性を高めるならVPSではなくクラウドを利用するという選択肢になりますが、そのぶんコストも増大します。

しかしLightSailはもともとAWSという安心感があり、内部的にはEC2のt2シリーズなのでVPSの標準機能のみでも信頼性・可用性は高いと判断できます。

LightSailを利用する際にの注意事項

LightSailを利用する上で注意するとこを記載しておきます。

■CPUの利用率に注意

LightSailはEC2と同じく、CPUクレジットという単位でCPUの性能が管理されます。一定時間ごとにCPUクレジットが付与・蓄積され、突発的なアクセス急増時などはそのCPUクレジットを消費することにより大量のアクセスを捌きます。しかし、常時高負荷状態でCPUを利用すると保有するCPUクレジットが枯渇してしまいCPUの機能制限がかかり性能が一気に落ちてしまいます。

通常のWebサイト運営等ならば特に注意する必要はありませんが、常にCPUを酷使するようなシステムの用途であればLightSailは不向きです。

■転送量に注意

通常のWebサイトであれば転送量の心配はほとんど不用ですが、重い画像や動画等をダウンロードさせるような場合には転送量が無料枠の上限を超える可能性がありますので注意しましょう。

そのようなサイトの場合には転送量無制限の国内VPSサービスの利用をお勧めします。

■シリアルコンソールによる接続が出来ない(Web管理画面からのSSHコンソールのみ)

管理画面でブラウザを利用したSSH接続は可能ですが、直接的なシリアルコンソールでの接続は出来ません。SSHサーバー自体が落ちてしまったり、SSHの設定をミスってSSHアクセスが不能になった場合は初めから再セットアップが必要になるのでSSHの設定は慎重にやりましょう。

Amazon LightSailのインスタンスの管理画面
Amazon LightSailの管理画面からのSSHコンソール

まとめ

「手軽にWordPressサイトを立ち上げたい」という場合や、今現在利用しているVPSサービスの移転先候補としてAmazon LightSailはかなりオススメです。

いつかAWSを利用して本格的なWebサービスを展開したいと思っていたが、学習コストの高さで敬遠していてAWSをまだ使ったことが無いという方の一発目のAWS体験としても、LightSailは使いやすくてとても良いと思います。

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